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あんずのブログ
第28話 紅花茶
紅花茶とつむぎの過去 冬の朝、《喫茶つむぎ》の扉の前に、一通の封筒が置かれていた。古びた便箋に、手書きの文字で「つむぎさんへ」とある。 差出人の名を見て、つむぎさんの指先が止まった。「……八重さん」 その名を聞いたあんずは首を傾げる。「どなた... -
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第27話 参鶏湯風スープ
参鶏湯風スープと年末の温もり 夕暮れの《喫茶つむぎ》。ガラス越しの通りには、買い物袋を下げた人々が足早に行き交っていた。年末特有のざわめきと、黒豆を煮るやさしい甘い香りが店内を包んでいる。 「……寒い~!」ベビーカーを押して入ってきたのは沙... -
五行クロニクル
第11話 涙のリフレクションは心の泉で(心労編)
夜のアラームが鳴っても、柚葉はベッドの上で動けなかった。レポートを提出して、課題も全部終わったはずなのに、心が空っぽだ。スマホを開けば、友達の楽しそうな投稿が次々と流れてくる。旅行、恋人、推しライブ、カフェ巡り。どれもキラキラしていて、... -
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第26話 黒酢ドリンク
黒酢ドリンクと紛れた瓶の謎 昼下がりの《喫茶つむぎ》。ストーブの火がやさしく揺れ、外には春を告げるような風が吹いていた。カウンターでは、あんずが仕込みの手を止めて伸びをしたところだった。 勢いよくドアが開く。「すみませぇん! 酸っぱいもの... -
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第25話 羊肉スープと栗のモンブラン
羊肉スープと栗のモンブラン 昼下がりの《喫茶つむぎ》。外は粉雪が舞い、ガラス越しに白い光がちらちらと揺れていた。カウンターでは、あんずが湯気の立つ鍋を見守っている。 扉のベルが鳴り、白髪にハットをかぶった男性が入ってきた。穏やかな笑みを浮... -
五行クロニクル
第10話 だるおもマラソンは月曜スタート(気虚編)
アラームが3回鳴っても、柚葉は起き上がれなかった。布団の中で片手だけ出してスマホを止める。目は半分しか開かず、脳がまだ夢の中にいるようだった。 「……あと5分。いや、10分……いや、もう今日、月曜やめたい……」 ようやく体を起こして鏡を見ると、目の... -
五行クロニクル
第9話 便秘ウォーズ!トイレ前線異常アリ(便秘編・陰虚秘)
朝。柚葉はトイレにこもっていた。 「……出ない。」 すでに10分は経っている。スマホの時計を見つめながら、額にじわりと汗がにじむ。「昨日も、その前の日も……出てないんだよね。てか、腸、サボリすぎじゃない?」 便秘3日目。お腹は張ってるのに、食欲は... -
五行クロニクル
第8話 生理前のカオスカーニバル(PMS編)
「……あーーもう!!」柚葉は自室の机の前で両手を広げた。夜の十一時。締め切り前のレポートはWordの白紙画面のまま。カップラーメンのフタは半分開いたまま。目の前には、食べかけのポテトチップスと、何度も温め直したホットミルク。 「いや、なんで今日... -
五行クロニクル
第7話 湿度MAXなのに、私の体内カラ砂漠?(腎陰虚編)
柚葉は夜の自室で、ノートパソコンに向かっていた。締め切りが迫るレポートは、真っ白なページのまま点滅しているカーソルだけが元気だ。加湿器はフル稼働で、モニターには「湿度70%」の数字。窓ガラスにはうっすら結露までついているのに、喉はカラカラ... -
あんずのブログ
第24話 紅玉アップルパイ
紅玉アップルパイと小さなサプライズ 午後の《喫茶つむぎ》。外は冬の風が木々を揺らし、カウンターの上ではオーブンの中から甘い香りが漂っていた。焼きたてのパイ生地がほのかに色づき、紅玉の赤がガラス越しにきらめいている。 扉のベルが鳴り、明るい...